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無人タクシー、米中で急速に普及 「安くて安全」も残る課題【地球コラム】

2025/10/24 10:13:00 公開


 無人タクシー、米中で急速に普及 「安くて安全」も残る課題【地球コラム】

 アメリカと中国で無人タクシーの実用化が進んでいる。運行地域は限定されているものの、運転者のいない完全自動運転が可能な「レベル4」の技術が用いられている。日本で「レベル4」の営業運転は2023年以降、松山市を走る路線バスや福井県永平寺の電動カートで実施されているが、タクシーは一部地域で実証の初期段階にある状態だ。大きく先行する米中両国での利用状況や安全性、課題をリポートする。(時事通信社ニューヨーク総局 武司智美、中国総局 榊原俊介)

【「譲り合い」も再現】

 無人タクシーは、カメラやセンサーが周囲の状況を把握し、人工知能(AI)が自動で操縦する。記者は2024年10月、スマートフォンのアプリを使い、米カリフォルニア州サンフランシスコ中心部の広場に米グーグル系ウェイモのタクシーを呼んだ。5分ほどでイギリスの高級車、ジャガーの電気自動車(EV)が到着。アプリでドアを開錠して乗り込み、車内モニターの「出発」をタップすると、無人の運転席で勝手にハンドルが回って走り始めた。

 中華街や急坂などの観光名所を通る約9キロのルートを約40分かけて走行した。信号や道路標識、法定速度を守り、交差点では歩行者を優先した。狭い道では対向車のスペースを空けて待機したり、前方の車がUターンする際に脇によけたりするなど「譲り合い」の姿勢も見せ、人間らしい運転を再現していた。

料金は約35ドル(約5000円)だった。米メディアの調査によると、ウェイモは従来の配車サービスより平均して3割あまり料金が高い。ただ、いずれも価格が需要に応じて大きく変動するため、必ずしもウェイモの方が高くなるとは限らない。

【「客が奪われた」】

 加えて、米国では配車サービスのウーバーやタクシーを利用した場合、15~20%程度のチップを支払うのがマナーとされるが、無人のウェイモでは不要だ。試しにウーバーで、ウェイモに乗車したのと同じ平日午後の時間帯に同様のルートを検索すると、料金は約43ドルだった。この時点でウェイモより高く、仮に15%のチップを上乗せすれば50ドル程度となる。

 サンフランシスコでウーバーの運転手をしている男性は「ウェイモのせいで最近客が減った気がする」と焦った様子だ。米調査会社イピットデータによると、サンフランシスコの配車サービスでウーバーのシェアは、ウェイモが参入した23年8月時点では66%だったが、24年11月には55%へ減少。一方、ウェイモはこの1年3カ月間に0%から22%へ伸ばしていた。

 ウェイモはサンフランシスコ一帯で約300台を展開している。無人タクシーに関する情報を発信している地元ユーチューバーのケビン・チェンさん(29)は「利用者は新しい物好きが多い」と指摘しつつ、「既に通勤など日常の足として使われている」とも語った。

【1~2分に1台の頻度】

 中国では、政府が走行規制の緩和で普及を後押しする中、各地で無人タクシーの商業化が始まっている。⾸都北京や広東省広州では複数の事業者が参入し、サービスを競っている。

 インターネット検索大手の百度(バイドゥ)は22年、中国で初めて完全無人タクシーの商用化に踏み切った。中国メディアによると、湖北省武漢では投入台数を段階的に増やしており、25年中に1500台まで拡大する方針。24年の利用者数は前年比で2桁増えたもようだ。

 記者は24年11月、武漢の中心街近くから数キロ離れたショッピングモールまでの移動に百度の無人タクシーを利用した。前に割り込んできた車両をよけるため急減速することはあったものの、総じて滑らかな走りだった。2年前に乗ったときと比べ、「違和感」を感じる頻度は大幅に減り、乗り心地は相当改善していると感じた。

 到着したモールの近くでは、1~2分に1台の頻度で利用者を見掛けた。20代の女性は「ここでは日常の風景だ」と話す。乗降場所が限られている上、制限速度を厳守するため通常のタクシーより時間がかかることが多いが、運賃はタクシーよりも4割ほど安いため「週に3回は乗る」という。